「...で?何しに来たんだよ」
「......頼む。俺の都合の悪い記憶だけ全て消せるようにぶん殴ってくれ」
「無理に決まってんだろ現実見ろ」

とある裏路地にある埃臭いバー。犯罪臭いにおいもするが、至って真っ当に商売が行われている店である。

「.........俺はどうしちまったんだろう」
「いつでもオメーは頭どうにかしてるよ」
「あんな...あんなメスゴリラに.........」
「うるせえ。女の見た目をそんな風に言うな短小野郎」

お前も言ってるじゃねえか...そんなことを言ったら店を追い出されるどころか自分の精神を肉体から切り離されそうなので黙る。

実はコイツも---このバーテンダーも、俺の幼馴染みである。ここの店長とデキていて、ふたりで店を立ち上げたのだという。意外と儲けているようで、最近高級なブランデーが置かれるようになった。

「あとアタシはもう人のこと殴んねえ。コイツを虐めるヤツがいねえ限りはな」

そう言ってここからじゃあ見えない位置にある腹を撫でる。この幼馴染みの男女も、あと数ヶ月もすれば母親になるのだ。感慨深いものである。まだ籍すら入れてないのに。子どもが産まれてから入籍して式を挙げるらしい。さんにんで結婚式をやるんだ...!と店長が宣言していたのを思い出す。あの店長はなかなか実家が金持ちらしいから、そりゃあ豪華なものになるのだろう。

「あのチンパンジー式に何着てくんだろうな」
「呼ぶのか?」
「あたりめえだろうが。まあオメーは呼ばねえけど」
「なんでだよ!」
「うるせえ!!!冗談だわかれ!!!!!」

頼んでもないのにウイスキーを注いでくる。まあ飲みたかったから良いのだが。これで飲みたくないものを出されて金を請求されたんじゃたまらない。

「まあ、あいつの服は全部お前が見立てんだろ。嫌がらせで白とかやめてくれよな」
「わかってる」

酔っ払いの客が団体で入ってきた。俺は奥に座り直す。そしてその後酔っ払いたちと共にやいのやいの飲み続け、泥酔してしまった。まあ帰れるだろうと千鳥足で歩く。頭もぐわんぐわんと回っていて気持ち悪い。

「ゔ...」

吐き気がした。少し休もう。
丁度いい所にごみ捨て場があった。運良く大量にごみ袋が重ねられている。俺はその上に大の字で寝転んだ。曇り空で星は見えない。なかなか気持ちがいい。星が見えればもっと、もっと────

「あ、したは...」

アイツとデートだ。牛丼食いに行った時に約束した。デートと呼べるかわからないが。待ち合わせは駅で、時間は、時間は?

「...まあどうせ、アイツは三時間寝坊だ」

目を閉じた。すぐに眠気は襲ってきて、俺は静かに眠りに落ちた。






目を覚ますと、まず頭痛がきた。

徐々に意識を回復していくと、なんだか身体がえらくだるかった。暑くはないが熱い。しとしとという表現が本当にぴったりの雨が降っている。

「...」

何時なのだろう。携帯で時間を確認しようとしたが、充電が切れているようでなんとも反応してくれなかった。釣れないやつめ。アイツみたいだ。

「う...」

嘔吐。砂が出てくるみたいにさらさらゲロが出た。変な喉の痛みも感じない。ただすごくだるい。

帰ろう、家に

そう思った。ここから歩いて五分でつく。昨日何故俺はベストを尽くさなかったのか。

ハンドバッグを持って立ち上がる。ふらふらした。空気を歩いているみたいだ。歩いたことないけど。

アパートについて、階段をのぼり、鍵を開けた。シャワーを浴びたかった。



ドアを閉めて靴を脱いだら、気が抜けた。あつい、身体が、あつい。しかし身体は冷蔵庫の表面のようにひんやり冷えている。俺は玄関で限界を迎え、倒れた。

眠りたくなかった。だってこれからアイツとデートだ。その意志に反して俺の瞼はとろとろ落ちてくる。まあいい、起きられれば。どうせアイツは三時間遅れだ。例え今が待ち合わせ時刻だとしても大丈夫だろう。


身体のだるさあつさ眠気がぐしゃぐしゃになって襲ってきた。俺はその波に呑まれるように包み込まれるようにまた眠った。




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いつ書いたか忘れた
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