「好きですよ」とアイツは笑う。だがそれはオレに向けての言葉ではない。アイツの視線の先にいるのはオレではないのだ。




「ただいまー」
「随分長えランニングだったな糞チビ」
「あれっ!?ひ、ヒル魔さん?今日遅いって言ってませんでしたっけ?!」
「ケケケ、早く終わったんだよ。用事が」

用事があった、なんて嘘だ。嘘をついたところでコイツにバレやしねえ。コイツはよほど怪しくなきゃ人のことを誰だって絶対的に信用する。オレみたいな目に見えてなペテン師でさえも、だ。

「そ、そうだったんですね!ごめんなさい!まだ何もご飯の支度してないんです...今すぐしますね!」
「いらね。食い行くぞ」
「えっ...ご、ごめんなさい。僕今金欠で...」
「オレが奢るに決まってんだろ」
「そ、そんなわけには...」
「いい。さっさと行くぞ」

眉をハの字にして「すいません...」と謝る。だけどすぐへにゃりと控えめに笑う。

「あ、ありがとうございます」
「ん」
「だけど、ちょっと着替えてきてもいいですか?汗くさいので」
「ンなもん気になんねぇよ」
「僕が気にしちゃうんです!今日学校に着てった服なので、選ぶ時間はかかりませんから!」

念入りに手を洗ってうがいをして、そこまで見てドアを閉じられた。きっかり三十秒、アイツはきっちり服を着て出てきた。

「おまたせしました!それじゃあ行きましょう!僕お腹ペコペコです」

靴を履いて外に出る。もちろん鍵はしっかりかけて。

「何食いてぇ」
「うーーーん。和食系、ですかね」
「わかった」

洋食屋に連れて行こうと心の中で決めつつ、隣を歩く恋人の手をとった。一瞬ビクリと跳ねはしたものの、特に恥ずかしがったりはせず「珍しいですね」とただ笑うだけだった。

「さみいな」
「そうですか?」
「ガキとは違ぇからな」
「もうっ!僕子どもじゃないですから!!」
「ケケ、どーだか」
「むむむ...!」

たしかにまだ子どもっぽいって言われますけど...!でもでも!!と、ぷくっと頬を膨らませながら抗議するコイツはかわいい。よく裏でオレたちのことを〝悪魔と天使カップル〟と言っている奴らがいるが...完全に否定はできない。おおよそその通りであると思う。

「あ、ねえ、ヒル魔さん。見てください。すごく星がよく見えますよ!」

そう言って満面の笑みで空を見上げるコイツはやっぱりガキだ。が、なんとなく瞳に似合わない切なそうな表情が浮かんでいるのがわかる。...そして、オレはコイツが今『誰のことを思って』『何を考えているのか』がわかってしまう。

し ん さ ん と 、 み た い な あ

糞チビは金魚のように口をぱくつかせて、こう空気を吐いた。...MotherFucker。オレは噛んでいたガムを吐き捨てた。


今この瞬間くらい、ソイツのこと、考えんなよ。

そんなだだひとつの願いすら言えず、ではオレたちは一体どういう関係なのか。そんなもの、オレが知りたい。

繋いだ手は、いつの間にか離れてしまっていた。




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完成してからあげようと思っていたんだろうなって思うけどいつまでかかるのかわからないから載せる。

ベリーブルーの設定(桜進♀←セナ♀)のヒルセナ♀。誰もしんさんに勝てやしないのだでもでもどうなる勝てるのかひるまさんはしんさんに!!!

2019.05.04.






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