進清十郎が桜庭春人に対して強い憤りを抱いたのはこの時が初めてではなかった。最初にそれを思ったのはある合宿の最中に起こった部員脱走事件で、先輩の「桜庭も逃げた」という声を密かに聞いてしまったことが原因だった。監督の落胆と後悔の入り混じる瞳が自分の心拍数を跳ね上げさせた。しかしその後戻って来た彼の姿を見て安堵を感じたのを覚えている。自分の思考が短絡的であると自覚し...違う 桜庭に対してだけ直情的に感情が揺れ動いてしまうことに気がついた。アメフトという限定された場面だけでなく、日常生活の些細な彼の言動にさえも酷く拘る自分がいて、それを知覚した時に自分は衝撃を受けた。最も、彼はあの頃学校や部活に顔を出すことが少なかったため、頻繁に感情を揺れ動かす機会も殆ど無かったが。

それももうあの頃の話だ。現在はずっと昔にあった距離感に戻り彼の瞳はいつでも自分を追っている。作ったような苦い笑みも過去のものになりつつあった。それは良い変化なのだろうと自分は感じているが実際のところは分からない。しかし先輩や監督の声を聞いていれば自分の考えは間違ってはいないのだと思う。

桜庭は変わった。だが自分はどうか。彼に対してのみ現れる直情的な性質が数年の時を経ても変わることはなかった。むしろ強くなってしまったこの感情をどのようにコントロールするのかをずっと不明瞭にし続けている。誰かに相談することは難しかった どう言語化するのが適切なのかも分からないから。もどかしさを煮詰めたようなこの感情を長年持て余している。もういい加減にどうにかしたい。こんな理不尽な感情を抱く自分に腹が立つのだ。突然呼ばれて私の前から居なくなってしまう桜庭を恨みがましく見つめる自分の視線 抵抗する瞼に気づかないように目を伏せた。

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今年はあげないつもりだった なんとなくで
だけどやっぱりさくしん好きで困るなあ
全然かこの作品なんですけど
しんさんはぴば

2022.04.08.

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