ああ今日もやってしまっている。散らばったポテトチップス胃酸の臭い上に跨る後輩。小さく可愛らしく喘ぐ彼女の名前なんて知る由もないから、名前を呼んであげられない。その代わりに(なるかわからないけど)起き上がって揺れる彼女の髪を梳き、化粧も少し落ちた顔に唇を落とした。女の子は「はるとさんもっと」とすがりついてくる。彼女の服を脱がせながら今度は唇を絡めていく。時折零れる「すき」という言葉が酷く俺を空しくさせたが下半身は熱く盛ったままだった。

「あっ、だめイク...っ」

ぺたりと体を預けた彼女の頭を二、三度撫で胸元の突起を弄る。彼女は無意識に力が入るのか、膣が締まってまた腰もゆるゆると動き始める。

「ああ...ん、はるとさん...」
「隣の部屋行こう。誰もいないから、多分」

こくこくと頷く彼女から抜いた。いつの間にか着けられていたスキンを外して捨てて、落ちていた箱を手に取った。周りを良く見てみれば男女ペアになってそこらに転がっていた。俺たちの他に三人ずつちょうどいるから、やはり別室は空いている。部屋の照明はきっとこの娘が落としたのであろう、窓から差す月明かりが酒の缶を照らす。
隣の部屋に繋がるドアを開け、明かりもつけずに二人してベッドに転がった。「はるとさん」と俺の名を呼ぶこの娘に応えるためにも俺は素早くスキンを着けてキスをした。積極的に舌を絡めてくる彼女に若干引きつつも、下半身の熱をさっさと放出すべくもう半裸になりつつある彼女に覆いかぶさった。




そこからはまた一興また一興酒を飲んでまた一興と繰り返していた。彼女がうとうとし始めたから布団をかけて十分だけ隣で眠った。そして彼女が深い眠りについたことを確認すると、部屋を出てシャワーを浴びた。久しぶりに湯船に浸かりたいななんて思いつつシャワーを終える。気づけばもう朝四時半を過ぎていて、月明かりを反射していた缶は太陽の光を照らしていた。
六月梅雨シーズン。久しぶりに見た太陽に一抹の喜びを覚えつつ財布に残っていた二千円を置いて部屋から出た、勿論荷物を持って。
家はここから三十分のところにあった。電車を使えば徒歩含め十分だ。しかも定期券内。少し悩んで俺はいつもと違う方向へ足を踏み出した。河川敷をぐるっと回って帰るコース、この道で帰れば四十分はかかる。
しかしそれでも良かった。久しぶりの晴れだし。散歩をしつつ帰りたかった。この時間ならあまり人もいないはずだ。酒とさっきまでの性交渉で曇る頭を晴れやかにしたかった 今日の空模様くらいには。雲か闇か分からないが未だ陰る太陽を見上げる。リュックサックを漁れば昨日飲み残したミネラルウォータが入っていてそれを飲み干す。空になったペットボトルをまたリュックに仕舞いとぽとぽと歩き出した。
まだ薄暗いここを通る人は誰もおらず、近くに立つ家にも生活感はまだ見えなかった。少し離れた場所に見えるマンションには電気がついている部屋もあるが。しかし簡単に数えられる程度だ。
しばらく変わり映えのない道を行き進めていく。鳥の鳴く声が段々聴こえ始め、そこで俺は自分が音楽を聴いていないことに気がついた。普段であったらひとりの時はすぐにイヤホンを着けてしまうというのに。今日はそういう意識すら呼び起こされなかったのだ。そして今も特段音楽を聴こうなんて感情は出ない。
今日はそういう日なんだ おセンチになっているってわけじゃないけど。素敵な朝だと、なんとなくそう感じた。

河川敷に着く頃には太陽も活気が出始めていて、しかしそれでも辺りはまだ青かった。コンクリートの道の外れの芝生は少し湿り気が多いような気がした。水気のある草を触ると意外にも冷たく、気持ちが良くて撫でるように触っていた。水滴が少し飛び、手の上に落ちていく。さっきの女の子には大変申し訳ないが、この草の方が一億倍今の俺には心地良い。サンドウィッチが食べたくなるような朝だ トマトとレタスが新鮮な粒マスタードが効いているパンの耳がついているサンドウィッチ。チェーン店では絶対に食べられない粋なもの、そういう朝もある。
しばらくこの子どもじみた行動を繰り返していた。本当に走り出したいような気分だったが頭の鈍痛と機能性の一切無いスニーカーにそれは阻まれた。都会にしては空気の澄んだ現在の河川敷で、ただ走るという行為ができない自分に嫌気がさす。最近は腹筋も薄れつつあり、やっぱり運動しないとなあと考えることも増えてきた。高校の時と比べて体重は五キロ以上増えたし生活も乱れているからこのままでは尚肥えてしまうだろう。サークルで運動をしているとはいえそんなものたかが知れている。
こんなことを考えていたってどうしようもないことはわかっている。考えたことをそのまま行動に移せれば良いのだが、生憎俺はそのような性質を持ち合わせていない。まあ良いのだどうだって、その内に危機感を覚えてどうにかしてくれるさ未来の自分が。結局それで一年が過ぎているのだけど。
ここの水滴も大分出る量が減った。あともう一回だけやったら帰路に戻ろう。俺は立ち上がった。そして少し進もうと前を向いた。

ら、

俺は全速力で駆け抜けた。鈍痛とかスニーカーとか諸々の走らない理由が頭から抜けていた。もう考えられない。ただ感じられるのは羞恥心。やばいまずい見られていた。今の恥ずかしい姿を見られていた!
グレーのフーディーと同色のスウェット、俺よりも二十センチくらい低い背前髪に滴る汗風のにおい風のにおい、しかし不思議と嫌な感じはしなかった。顔はフードでよく見えなかったけどスニーカーの大きさが俺のよりも大分小さかった。
あまりにも恥ずかしい思いをしてしまったのに何故か彼の(もしくは彼女の)特徴は細やかに捉えていた。熱くなる肺から息を思い切り吐き出す。そして無意識に笑い息も出てしまった。慌てて口を塞いで周りを確認する。しかし今度こそ誰もいなかった。膝に手をついて息の続く限り笑った。あんなに渋っていたのに走ってしまうなんて!でも今ものすごく気持ちが良い、本当に良いのだ。鈍痛なんてもう頭の片隅にもいなかった。本日二度目の大きな背伸びをして、地面を軽く踏み込んだ。もう抵抗なんて一切無かった。スニーカーくんごめんね、今度晴れの日綺麗にするから。リュックから軽い物がぶつかり合うような音が聞こえてくる。それすらも耳に好い音楽に聴こえて楽しかった。

「お礼を言いたい気分だよ」

彼、もしくは彼女に どう見ても不審者だった俺を見逃してくれただけでなく、走るように焚き付けてくれたのだから。...これは全部俺の思い込みだけどね。でもこう思い込んでいなきゃあ羞恥心で爆発しそうになる。あとで通報されてしまうかもしれない。から、今こうして楽しんでおくのだ妄想を!

夢中になって走っていれば、いつも使っているドラッグストアが見えてきた。もう青は見えない。より一層サンドウィッチを食べたくなるような朝に近づいていた。今日は二限から今日は二限から 口から出てきそうな肺を宥めるように頭の中で繰り返し呟き、足の親指に力を込めた。



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2023.3.15に修正してたものが出てきたのでこちらに差し替えますでも過去のも残したい性なので下に残します(なんで?)
タイトルもあまりにも適当だったので変えます、元々は「貝殻集めて」でした未来の私へ

2024.02.25更新



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ああ今日もやってしまっている。散らばったポテトチップス胃酸の臭い上に跨る後輩。小さく可愛らしく喘ぐ彼女の名前なんて知る由もないから、名前を呼んであげられない。その代わりに(なるかわからないけど)起き上がって揺れる彼女の髪を梳き、化粧も少し落ちた顔に唇を落とした。女の子は「はるとさんもっと」とすがりついてくる。彼女の服を脱がせながら今度は唇を絡めていく。時折零れる「すき」という言葉が酷く俺を空しくさせたが下半身は熱く盛ったままだった。

「あっ、だめイク...っ」

ぺたりと体を預けた彼女の頭を二、三度撫で胸元の突起を弄る。彼女は無意識に力が入るのか、膣が締まってまた腰もゆるゆると動き始める。

「ああ...ッ、はるとさん...」
「隣の部屋行こう。誰もいないから、多分」

こくこくと頷く彼女から抜いた。いつの間にか着けられていたスキンを外して捨てて、落ちていた箱を手に取った。周りを良く見てみれば男女ペアになってそこらに転がっていた。俺たちの他に三人ずつちょうどいるから、やはり別室は空いている。部屋の照明はきっとこの娘が落としたのであろう、窓から差す月明かりが酒の缶を照らす。
隣の部屋に繋がるドアを開け、明かりもつけずに二人してベッドに転がった。「はるとさん」と俺の名を呼ぶこの娘に応えるためにも俺は素早くスキンを着けてキスをした。積極的に舌を絡めてくる彼女に若干引きつつも、下半身の熱をさっさと放出すべくもう半裸になりつつある彼女に覆いかぶさった。




そこからはまた一興また一興酒を飲んでまた一興と繰り返していた。彼女がうとうとし始めたから布団をかけて十分だけ隣で眠った。そして彼女が深い眠りについたことを確認すると、部屋を出てシャワーを浴びた。久しぶりに湯船に浸かりたいななんて思いつつシャワーを終える。気づけばもう朝四時半を過ぎていて、月明かりを反射していた缶は太陽の光を照らしていた。
今は六月梅雨シーズン。久しぶりに見た太陽に一抹の喜びを覚えつつ財布に残っていた二千円を置いて部屋から出た。勿論荷物を持って。
家はここから三十分のところにあった。電車を使えば徒歩含め十分だ。しかも定期券内。少し悩んで俺はいつもと違う方向へ足を踏み出した。河川敷をぐるっと回って帰るコース、この道で帰れば四十分はかかる。
しかしそれでも良かった。久しぶりの晴れだし。散歩をしつつ帰りたかった。この時間ならあまり人もいないはずだ。酒とさっきまでの性交渉で曇る頭を晴れやかにしたかった今日の空模様くらいには。雲か闇か分からないが未だ陰る太陽を見上げる。リュックサックを漁れば昨日飲み残したミネラルウォータが入っていてそれを飲み干す。空になったペットボトルをまたリュックに仕舞いとぽとぽと歩き出した。
まだ薄暗いここを通る人は誰もおらず、近くに立つ家にも生活感はまだ見えなかった。少し離れた場所に見えるマンションには電気がついている部屋もあるが。しかし簡単に数えられる程度だ。
しばらく変わり映えのない道を行き進めていく。鳥の鳴く声が段々聴こえ始め、そこで俺は自分が音楽を聴いていないことに気がついた。普段であったらひとりの時はすぐにイヤホンを着けてしまうというのに。今日はそういう意識すら呼び起こされなかったのだ。そして今も特段音楽を聴こうなんて感情は出ない。
今日はそういう日なんだ おセンチになっているってわけじゃあないけど。素敵な朝だと、なんとなくそう感じた。

河川敷に着く頃には太陽も活気が出始めていて、しかしそれでも辺りはまだ青かった。コンクリートの道の外れの芝生は少し湿り気が多いような気がした。水気のある草を触ると意外にも冷たく、気持ちが良くて撫でるように触っていた。水滴が少し飛び、手の上に落ちていく。さっきの女の子には申し訳ないが、この草の方が一億倍今の俺には心地良い。ジャスティン・ディンパーレイクのキャント・ストップ・ザ・フィーリングを彷彿させるような朝だ。サンドウィッチが食べたくなる。トマトとレタスが新鮮な粒マスタードが効いているパンの耳がついているサンドウィッチ。チェーン店では絶対に食べられない粋なものだ。
しばらくこの子どもじみた行動を繰り返していた。本当に走り出したいような気分だったが頭の鈍痛と機能性の一切無いスニーカーにそれは阻まれた。都会にしては空気の澄んだ現在の河川敷で、ただ走るという行為ができない自分に嫌気がさす。最近は腹筋も薄れつつあり、やっぱり運動しないとなあと考えることも増えてきた。高校の時と比べて体重は五キロ以上増えたし生活も乱れているからこのままでは尚肥えてしまうだろう。サークルで運動をしているとはいえそんなもの高が知れている。
こんなことを考えていたってどうしようもないことはわかっている。考えたことをそのまま行動に移せれば良いのだが、生憎俺はそのような性質を持ち合わせていない。まあ良いのだどうだって、その内に危機感を覚えてどうにかしてくれるさ未来の自分が。結局それで一年が過ぎているのだけど。
ここの水滴も大分出る量が減った。あともう一回だけやったら帰路に戻ろう。俺は立ち上がった。そして少し進もうと前を向いた。

ら、

俺は全速力で駆け抜けた。鈍痛とかスニーカーとか諸々の走らない理由が頭から抜けていた。もう考えられない。ただ感じられるのは羞恥心。やばいまずい見られていた。今の恥ずかしい姿を見られていた!
グレーのフーディーと同色のスウェット、俺よりも二十センチくらい低い背前髪に滴る汗風のにおい風のにおい、しかし不思議と嫌な感じはしなかった。顔はフードでよく見えなかったけどスニーカーの大きさが俺のよりも大分小さかった。
あまりにも恥ずかしい思いをしてしまったのに何故か彼の(もしくは彼女の)特徴は細やかに捉えていた。熱くなる肺から息を思い切り吐き出す。そして無意識に笑い息も出てしまった。慌てて口を塞いで周りを確認する。しかし今度こそ誰もいなかった。膝に手をついて息の続く限り笑った。あんなに渋っていたのに走ってしまうなんて!でも今ものすごく気持ちが良い、本当に良いのだ。鈍痛なんてもう頭の片隅にもいなかった。本日二度目の大きな背伸びをして、地面を軽く踏み込んだ。もう抵抗なんて一切無かった。スニーカーくんごめんね、今度晴れの日綺麗にするから。リュックから軽い物がぶつかり合うような音が聞こえてくる。それすらも耳に好い音楽に聴こえて楽しかった。スガシカオのはじまりの日のイントロみたいな音が耳を楽しくくすぐっていた。

「お礼を言いたい気分だよ」

あの人に。
どう見ても不審者だった俺を見逃してくれただけでなく、走るように焚き付けてくれたのだから。...これは全部俺の思い込みだけどね。でもこう思い込んでいなきゃあ羞恥心で爆発しそうになる。あとで通報されてしまうかもしれない。から、今こうして楽しんでおくのだ妄想を!

夢中になって走っていれば、いつも使っているドラッグストアが見えてきた。もう青は見えない。より一層キャント・ストップ・ザ・フィーリングのような朝に近づいていた。今日は二限から今日は二限から。口から出てきそうな肺を宥めるように頭の中で繰り返し呟き、足の親指に力を込めた。

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歩くのやめました
2020.01.03.

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