負けた。
あんなド素人の小さいヤツに。
たったの一回、されど一回。
一体なにをしているんだ俺は。

 いつものランニングコース
悶々とそんなことを考えていたら

 俺は盛大にコケた。


Would you marry me ?




「......」

 情けない。
高校生にもなってトレーニングで転ぶだなんて。
幸い、暗かったので人はいなかった。
否、暗いと言っては語弊があるかもしれない。夕焼けはまだ出ているのだが空が暗いのだ。
子どもたちはもう帰る時間だろうし、年寄りも夕飯の時間だろう。

 やれやれと立ち上がる。
少し膝にピリッとした痛みがあった。

「......」

 擦りむいていた。
試合後で暑かったため、ハーフパンツを今日は穿いていた。
それが仇となってしまった。

 走り続けようと思ったが、小学生の頃の担任に『転んじゃった時はすぐ水で洗わないとだめよ!バイキンが入っちゃうから!』と言われたのを思い出し、どこか洗える場所を探した。

 毎日走ってはいるが、走るだけなので、どこに何があるのかは分からない。分かるのは近くにスポーツショップがあるということだけだ。
...しかたがない。非常に不本意ではあるが、川の水で洗うしかない。


「あっ、あのぉ...」

 少し高い声が耳に入った。
だが気にせず坂を下っていこうとした。

「えっと、あのっ!」
「...俺のことか?」
「は、はい!転んでましたよね?大丈夫ですか?」

...どうやら見られてしまっていたらしい。
暗くてよくは見えないが女のようだ。

「...見ていたのか」
「えっ!いや、見るつもりは無かったんです!ただ、その...」
「いや、別に怒っているわけではない。少し恥ずかしかっただけだ」
「そ、そうですか...って、そうじゃなくて!転んだところ、大丈夫ですか?」
「少し血がでているくらいだ。心配ない」
「僕、消毒と絆創膏持ってるので、よかったら使いませんか?」
「...すまない。」
「少し歩けますか?あっちに座れる場所あるので」
「いや、手当してもらうわけには...」
「いえ!たぶんすぐ終わりますし!気にしないでください!」

 じゃ、こっち来てください!と、手を引っ張られた。
小さいのに以外と力が強かった。
されるがままに、小さい女に連れていかれた。


✧✧✧✧✧


「ここですよー!人がいなくてよかったぁ~」
「...すまない。世話になる。」
「いえいえ!大丈夫ですよー」

 がさごそとリュックを漁り始めた。
小さい花柄のポーチを彼女は取り出し、その中から絆創膏と消毒を出した。

「失礼しまーす」
「っ!」
「あ、痛いですか?」
「...このくらいなんともない」
「たしかに、強そうですもんね」

...失礼なことを言ってくれるじゃないか。
いや、もしかしたら彼女なりの褒め言葉なのかもしれない。
その気配を察したのか、おどおどしながら

「別に悪口とかじゃないですから!」

と言われた。



 その時お互いの顔を初めて見た。
夕焼けが彼女の顔を見せてくれた。
茶色いくせっ毛がぴょこぴょこはねている、小動物のような女だ。くりくりとした目がリスを連想させる。



 彼女も俺の顔をまじまじと見つめていた。すると彼女は、そのくりくりとした目を大きく見開いた。

「し、進さん...!?」
「...?何故わかった」


 見開いた目をちょっと引き、怯えたような表情になる。
大型動物に睨まれたリス
例えるならそんな感じだ。

「いや...あはは、はぁ...」
「む?その制服は、泥門の...」
「ぼ、僕、アメフト部の主務なんです」
「ほう。...ん?ベンチにお前の様な女はいたか...?」
「あ、あはは!いましたよ!!べっ、別に試合とか出てませんし!!」
「そうか。...泥門のアイツには負けた。アイシールド21といったか」
「えっ!?アイシールド!?」
「...?なぜそんなに声を荒らげる」
「いっ、いやぁ...!あは、あははははは...」
「まぁいい。アイツの走りは────」

 アイシールド21についてべらべら話しまくる。
その間にも、リスのような女は黙って俺の膝に手当をしていてくれた。
彼女の手遣いは優しい。自分が壊れそうなものになっているような、そんな不思議な感覚に陥った。

「────だった。アイツは一体何者なんだ?アイツの走りは素人の走りではない。正直、アイツの走りは尊敬する。」
「えぇーーっと......進さんが尊敬するような方ではないと思います、はい。素人ですし、試合なんてあれが二回目だったし...」
「二回目だったのか!?」
「は、はい...」

 本物の素人ではないか...
 俺はそんなヤツに...

「終わりましたよ!」
「すまなかった。時間を取らせたな。」
「そんなことないですよ!進さんと話せて、楽しかったです!」


 にこりと微笑まれた。
キュンと心臓がなった。
少し心拍数も上がってきている。
なんなんだこの妙に胸が高鳴る変な感情は。


「.........」
「し、進さん?」
「...お前、名前をなんというんだ」
「ぼ、僕ですか?僕の名前は、小早川瀬那です」
「そうか。また、泥門とやる時は楽しみにしている。ちゃんと主務なら試合を観ていろよ、ベンチで。」
「あ、あははははは...」
「アイシールド21には負けはせん。」
「...!」

 小早川は少し驚いたような顔をした。
すぐに表情を引き締めて、ちょっと不敵に笑った。
心臓がとくんと音を立てた。

「進さん、僕、絶対に負けませんから。待っててくださいね?」

「お、お前は────」


 ピリリリリリと音が鳴った。
小早川がはっとしたようにポケットからなにやら機械を取り出す。

「は、はい!」
『テメェェェ!!!!どこうろちょろしてんだ!!!もう七時回ってんぞ!!さっさと来い!!この糞主務!!!!!!!!』
「ひ、ひぇぇ!!!ごめんなさーーーーーい!!!」

「進さん!ごめんなさい!ヒル魔さんに怒られちゃったので帰ります!」

 さようならーーーーーーーとものすごい速さで行ってしまった。俺でも追いつくのは難しいだろう。




......ん?あの速さ?何処かで見た気が............?
というか、あんなに速く走れる高校生なんて、俺の他にアイシールド21しか見たことが────

「......!!!!アイシールド21!?」

 気がづいた時には時すでに遅し。小早川瀬那はもう、暗闇の中に溶け込んでいってしまっていた。


 彼女の触れた膝が妙に嬉しく、暖かかった。



✧✧✧✧✧


「......」
「どうしたの?進。元気ないじゃん」
「...とある人物のことが頭から離れなくてな...。」
「!?だれだれ!どんな人なの!?」
「俺よりも遥かに小さく、リスのような女だ。」
「お、おぉ!?」
「何故かその女に会ってから、といっても昨日のことなんだが、胸が苦しい。」
「きっかけは!?」
「転んでしまったところを助けてもらった。」
「え!?少女マンガじゃん!」
「む?なんだそれは?泥門の生徒でな。アメフトの主務らしい。」
「へぇー!じゃあ、進のこと知ってるじゃん!」
「...そうなんだが、」
「え?」
「......とにかく、その女に会ってからというもの、心臓が少し変なんだ。それに、頭が非常にもやもやする。気分もあまり盛り上がらない。何故だ?アイツは魔法使いかなにかだったのか?」
「......進。それはねぇ、自分で考えなきゃダメだよ。俺が教えちゃいけないと思う。」
「そうか...だが、気になりすぎてしまって、今日は朝練にあまり集中できなかった。」
「えっ!?進が部活に集中できないとかマズイじゃん!!監督にバレたら......」
「...また、会えるだろうか?」
「あ、練習終わったら会いに行っちゃえば?泥門なら、進の足ならすぐでしょ!なーんて────」
「!!そうだな。行ってみるか。」
「は?え、ちょっと待って、本気?」
「あぁ。俺はいつでも本気だ。」
「えぇぇぇぇぇーーーーーーーーーーー!!??」


 王城に、大人気アイドル桜庭春人の叫び声が響いた。


 そして練習後

 いつもなら残った自主練をする進が、今日はすぐ帰るということにチームメイトが追求しないわけがなかった。

「お、おい進!!なんで帰るんだよぉ~っ!」
「進!どうした!腹でも痛いのか?んなもんクソすればすぐなおるぞ!!ガーッハッハッハ!!!」
「進!!お前、自主練サボってどこに行くつもりだ!!」

「泥門に行ってきます」

「「「で、泥門んんんんんんん!?!?!?」」」

「では」


 プレーではめちゃめちゃ頼りがいのある足が、今では恨めしく感じる。

 何をするつもりなんだ。デビルバッツのアイシールド21に宣戦布告でもしに行くつもりか...!


「監督!!自主練で走ってきます!」
「俺も!」
「俺も!」
「じゃあワシも!」
「行ってこい!!!!!くれぐれも問題は起こすんじゃあないぞ!!!!」



 かくして、王城ホワイトナイツのメンバーは進を追いかけるべく、泥門に向かった。


✧✧✧✧✧




  一方こちらは泥門高校。
今日もメンバーは三人しかいないが頑張っている。
────とは言っても、そのうちの一人は女で、しかもド素人である。
なんで女がアメフトの試合に出られるんだ、おかしいだろ、なーんていうのはこのチームのキャプテン、蛭魔妖一に聞いてくださいまし。



 ヒル魔にそのスピードの才能を買われ、見事主務からエースにクラスチェンジした少女、小早川瀬那。
なんで僕がぁぁぁぁ!!!と嘆いているが、本人もアメフトの楽しさを知ってしまったために、抜け出せずにいる。

「セナーー!!どこに行っちゃったのーーー?」
「セナちゃんならさっき先生に呼び出されてたよ!」
「あら、そうなの!もー、セナったら、何やったのかしら?」


 彼女は姉崎まもり。
小早川瀬那の近所のお姉さんだ。
いじめられっ子だったセナのことを、真綿にくるんで大切に、それはもう大切に育ててきた。
もちろん、実際に育てたのは彼女の両親ではあるが。
かなりの過保護なので、セナがアメフトをやっているということを知ったら、きっと大変なことになってしまう。

 小早川瀬那がアイシールド21の仮面を被っている間は、栗田とヒル魔が上手く誤魔化していてくれる。


「...?なにかしら?あれ・・・」


 その姉崎まもりつぶやきで、ヒル魔が校門を見た。
なにかがものすごいスピードで向かってくる。
さすがの栗田とセナも気がついたようで、何事かと校門に注目していた。

「あれって、もしかして...」
「し、進さん!?」

「小早川瀬那はいるか!」

「ま、まずい!ヒル魔さぁぁん!!!」
「アイシールド21!!着替えてこい!!」
「わ、わかりました!!...まもりねーちゃんに、なんて言いましょう?」
「ししっ、俺に任せとけ!」

ピーンポーンパーンポーンと校内放送が入った。

『姉崎まもりさん、姉崎まもりさん、至急職員室まで来てください。』

「えっ!?なにかしら?ちょっと栗田くん、頼むわねー!」
「う、うん!わかったよー!」

 まもりねーちゃんは走って校内に行ってしまった。

「さっさと着替えてこいアイシールド!!」
「わ、わかりました!!!!」

「おい!そこにいるのはヒル魔だな!小早川瀬那はいるか!」
「用があるならこっち来いよ、そんなとこからじゃ、何言ってっかわかんねぇからな。」
「なんだって?聞こえない」
「用があるならこっち来いつってんだよ!!!このつんぼ!!!!!」
「了解した。」



 ちっ、さすが40ヤード4秒4だ。
もう半分まで来ちまった。
なんて思っている間にも、もうここまでたどり着いた。

「小早川瀬那はいるか」
「今着替えてる。で?うちの主務になにかようか?」
「話がある。」
「なんの」
「...ただ話がしたいだけだ。」
「あほか!俺らはクリスマスボールに向けて練習してんだよ!テメェらは余裕なのかよ!!」
「余裕ではない。が、それでも話がしたい。」
「...ほぅ?」

「見つけたぞ!!!」
「しーーーーーん!!!!!!」
「バッハハハハ!!進に追いつけたぞーーー!」

「ほれ、チームメイトが呼んでんぞ。さっさと帰れ」
「...」
「し、進さん!お待たせしました!」
「...!」

 髪の毛を手ぐしで整えながら来た一日ぶりの小早川瀬那だ。
 会えただけでこんなにも胸が跳ねる。何もしていないのに、何故?自分ではこの気持ちの正体は分からなかった。



「き、昨日は世話になったな。」
「いえいえ!わざわざお礼言いに来てくれたんですか?」
「ランニングコースが近くだったからな。」
「王城からここまで!?全然近くないですよ!」
「お前に会えるのならこのくらいの距離、とても近い。」
「え゛っ゛!!!」
「?」
「...し、進さん、そういうのは、僕みたいなのに言っちゃ駄目ですよ......」



「た、高見さん、すごい少女マンガの世界が広がってます...」
「お前こういうの得意だろ!?どうにかしろ!相手の女の子困ってるぞ!」
「そこのアイドル!進をさっさと連れて帰れ!練習の邪魔だ!」
「な、なんで俺が!」



 進をどうするかで議論してはいるが、結局何一つまとまらない。

 その間にも、セナと進の会話は続いたいたのである。



「なぜお前に言っては駄目なのだ?」
「そ、そういうのは、好きな人に言うものですよ...恋愛的な意味の。」
「...恋愛的な意味の好きな人?恋、ということか?俺は恋をしたことがないから分からない。」
「まぁ、僕もなんですけどねー」



 ここで、王城の我らがキャプテン大田原誠が盛大に爆弾を落としたのである。


「ほーー!!!ということは、進はそのマネージャーのことが好きなのかぁ!!!よきかなよきかな!ガーッハッハッハ!!!」

「ハァ?」
「ハァ?」
「ハァァァァァーーーーーー????」


 後のハァハァ三兄弟に負けない勢いで、王城の桜庭と高見、そして、一番爆死しているであろうセナが息ぴったりに言いのけた。



「な、何言ってるんですか!!」
「お?スマンスマン!!泥門のマネージャーよ!顔が茹でダコみたいだぞ!?大丈夫かぁ!!!」
「誰のせいだと思ってんだよこの筋肉バカ!マネージャーの子の気持ちを考えろ!!」
「ぼ、僕はマネージャーじゃないですー!主務なんです!!!」
「うっせー!糞主務!テメェの突っ込むとこはそこじゃねーんだよ!!」
「お、おい!進!どうした!?」
「し、進くん?なんか、固まっちゃってるけど...?」




 おそるおそる、男性陣で進を取り囲む。
栗田の後ろからひょこりとセナがのぞき込む。



「し、進くーん?大丈夫でーすかーー?」
「さ、桜庭。こ、この感情は、恋、だったのか...!」
「自覚しちゃったよ!!!」
「小早川!!」
「は、はひぃぃぃぃ!!!」
「すまない!昨日出会ったばかりだが伝えさせていただく!」
「な、なんでしょう!!」

  進は大きく息を吸い込み、一気に言った。

「俺は、どうやらお前のことが好きらしい。よければ繋がって頂けないだろうか!」





「ブフォwwwwwwwwwwwwww」
「進!!その言い方は駄目だろうwwwwww」
「えっ、どういうことですか?...あっ!ヒル魔さんが過呼吸で死にそうだ!栗田さん!ビニール袋ありませんか!?」
「ドーナツ食べた袋ならあるよ!」
「それください...って、厚っこいからやりづらい!」
「小早川瀬那!返事は!」
「進さんちょっと待っててください!」
「進、お前はこっちに来い。話がある...www」
「俺は小早川瀬那に話があるんだ!」
「いいからこい!!!先輩命令だ!!!」


 高見が進を引っ張って、少し離れた所に連れていく。

「進...お前、いきなりシモい話は駄目だろうが...」
「しもい?とはなんですか」
「はぁ???...まぁいいや、意識してなかったなら...ちなみに、どういう意味で『繋がってくれ』なんて言ったんだ?」
「む。親しくなって欲しい、ということです。」
「あわよくば?」
「将来の伴侶として、共に生きてもらいたい!」
「愛おもっ!!高校生のうちから結婚を考えるなよ!!」
「ですが、これ以外には思うことはありません。これが俺の本心です。」
「はぁ......そのままの言葉、じゃあまずいから、こういうんだ。耳を貸せ」
「はい。」

「高見さん!早く進を連れてきてください!!そして大田原さんに説明してあげてくださーーい!」

「...なるほど。わかりました、早速いってきます」
「がんばれしーーん!桜庭待ってろ今行く!」


「小早川瀬那!!!」
「は、はい!」
「ようやく来たな、進清十郎。うちの糞主務になんのようだ。」
「ヒル魔!ふとんがふっとんだーー!」
「wwwwwwwwwwww」
「今のうちに要件を済ませちゃうんだ!ヒル魔が復活する前に!!!」
「くっそ豚マンwwwwwwwww覚えてやがれwwwwwwwwwwww」


 ヒル魔は過呼吸により戦闘不能になってしまった。
これはチャンスだとばかりに、進はセナに詰め寄った。
さっきの高見さんに教わった言葉を、自分流に言うッ!

 その念を胸にいざ出陣。



「邪魔者はいなくなった...。改めて言うぞ、小早川瀬那!」
「は、はい!」
「俺と将来のゴールインを前提に、付き合ってくれ!!」
「...へ?」
「俺と付き合ってくれ。恋愛的な意味で。結婚を前提に。」
「.........」
「主務さん!返事をお願いします!」
「進のためにも!」
「アイツの初めての恋なんだ!」
「なんじゃあ?なにが起こっとるんじゃ?」
「お前は黙ってろ!!」

「えぇっと...その...あのぉ......」

 その場にいる全員(ヒル魔は死んでいる)が固唾を飲んで見守った。



 ゆっくり深呼吸をして、じっと進の目を見た。
あの目だ。自分が屈辱を味わった時に見た目。
ぞくりと少し身震いがした。


「さ、さすがにいきなり過ぎるので、お友だちから始めませんか?」

 ヘラりと微笑まれながら言われた。
顔が、目が、さっきのではなかった。

「お、おぉ...?進が固まっちゃった!」
「固まっていない。至って正常だ。小早川瀬那。」
「は、はい?」
「...たしかに段階が早すぎたな。すまない、友だちから始めていただきたい。」
「...!はい!僕も、進さんと仲良くなりたいですっ!」

「おっ、」
「「「「おめでとーーーー!!!!」」」」
「ガハハハハ!!進!よかったなぁ!!」
「小早川さん!進のことをよろしく頼むね!」
「まったく...世話が焼けるな!」
「セナちゃん!なんかあったらいつでも相談してね!」
「ありがとうございます栗田さん!」
「胴上げじゃーーーーーっ!!!」
「えっ!?うわぁー!」

 えっほえっほえっほと、人生二度目の胴上げを受けた小早川瀬那は目を白黒させていた。

 俺はどうしていいか分からなかったので、とりあえず拍手をしておいた。

  春の、暖かい風が、頬を撫でた。
  自分の胸もなんだか心地よく暖かい。


 俺は確かに自らの恋心を知ったのであった。






  ◈  ◇  ◈








「胴上げ終わったあとに進さんが、『そういえば小早川瀬那。お前はアイシールド21なのか?』なーんて言うから、ヒル魔さんにすっごい怒られたんですよ!まもりねーちゃんにはバレなかったからよかったけど!...ふふっ、あの頃は若かったなぁ!」
「...そうだな。」
「進さんが卒業するときになって、やっとちゃんと告白してくれて。実はその頃、僕も進さんのこと大好きになっちゃってたんですよー!だけど進さんなんにも言ってくれないから...」
「それはすまなかった。」
「許します!でもなんだかんだ、付き合い初めてもう三年ですねぇ。っていっても、高校生の時も二人で試合とか見に行ってたから、なんか三年以上な感じがするけどなぁ~」
「そうだな。」
「まぁでもこうやって、進さんと一緒に居れるなら幸せですよ、僕。」
「...俺もだ。」
「ははは~あ、お茶飲みます?」
「いや、その前に話がある。」
「...?」
「お前と付き合う時に俺は『結婚を前提に』と言った。それは覚えているか?」
「...はい。」
「ならばよかった。俺はアメフトの傍ら勉強よ少しずつしていた。」
「...」
「高見さんにも、桜庭にも、勉強を教えてもらっていた。それは今でも変わらない。ただ、ここ三ヶ月、ずっと一人で悩んでいたことがある。」
「...はい。」
「セナ、小早川瀬那。」
「...なんでしょう?」
「いくぞ」
「えっ...?うわぁ!なんでそんな────」




「Would you marry me ?」





「しっ~~~//////もうっ!そんな王子様みたいにっ...!」

「早く、返事を、くれないか?恥ずかしいんだ、結構これも。」

「っ、ぷぷっ!Yes!Of course!進...じゃなくて、清十郎さん!大好きですっ!!」
「...っ!まったく、お前は、そうやって人のことを恥ずかしくさせるのが得意だな!」
「清十郎さんもね!」


 ぎゅぅぅぅぅぅぅっと最愛の人を抱きしめる。

これでやっと、ずっと一緒に居られる。

 長かった、本当に長かった。


 安いチノパンのポケットに忍ばせておいた給料三ヶ月分の指輪を、彼女の左手の薬指にそっと嵌めた。


 キラキラ輝く彼女の目には、無数の星が煌めいていた。
それがなんだか宝石のように見えて、知らない間に涙が頬を伝った。
なんで泣いてるんですかと問われたが、彼女も泣いていた。



 春の夜の風。
 この風力、匂い、感触を永遠に忘れることは無いだろう。



もう一度彼女を抱きしめ、肩に唇を落とした。




「愛してます、清十郎さん。」
「...俺もだ。」


 体全体で彼女の熱を感じとった。
この上ない幸せを噛み締めながら俺は彼女にキスをした。



                                  ーfinー


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

誤字も脱字もなにもチェックしてないし読んですらいない。「wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」とか見えたからきっと今の私が読んだら死ぬ。それにこの頃はまだアイシールド21はまりたてで全然内容知らなかったからさ…今じゃもう桜進過激派だから進セナはかけないね、残念。

wrote day 2017.06.21.

2018.10.09.

about

・当サイトは、女性向け二次創作小説サイトです。
・原作者様、出版社様、関連会社様とは一切無関係です。
・BL(ボーイズラブ)要素を含みます。
・小説の中には、女体化が多く含まれております。
・転載、複製、加工、及び自作発言は絶対にお止めください。