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三千万年前から恋してるの





誇張って言われてしまえばそうなんだけど、でも感覚的にはそうなんだよってことたくさんある。岩みたいな煎餅とかマグマのようなコーヒーとか。大袈裟だなって思うよ。言ってる方も聞いてる方も多分。でも説得力上がるような気がしないでもないでしょ。

そんなマグマのように熱いコーヒーを啜りながら課題をしていた。スケジュール的に今日しか無いのだ、課題を終わらせられる余裕。だって明日から芝居の稽古だ。しかも関西で。
嫌だなってもう百回はため息をついた。講義を休めるのは良いけど練習に出られないし。それに君にも会えない。その事実だけで五千粒涙を流せる。でも仕方ない。やっぱりこの道で生きていこうと決意したのは自分だし、それにかなり融通を利かせてもらっているのだ。ただ辞めますでは済まないものになっている。そんなこともう言わないだろうけど。

レポートを書くために読んでいたバームクーヘン位分厚い本を置いた。現在時刻AM5:00。多分明日の今頃は新幹線に乗っていて、いつも通り君の夢を見ているのだと思う。そして君は俺に想われているなんて一切気づかずに、いつも通り基礎トレーニングに精を出しているんじゃないかな。

「今はもう河川敷かな」

馬鹿みたいに早起きで真面目な彼は脇目も振らずに走っているのだろう。重たい荷物を運んでるおばあちゃんがいても、車に轢かれそうな子どもがいても、何にも気にせず。己を演るんだ。自分のこんな時間まで起きてレポートを書いているのが馬鹿らしくなる。俺もこんなくだらない課題を投げ出して彼と一緒に走りたいと思うよ。全然追いつけないだろうけどさ。でもついて行くんだ。小判鮫みたいに。
でも行かない。それは決して怠惰からくるものではない。ここでこの課題を投げ出せば練習に参加できなくなるし、そして提出しなければ来年彼と一緒にいられなくなる。もう自分は先のことが考えられるようになったのだ。それが一等嬉しくもあるが、なんとなく切なくもなる。愚直に気張っていた頃にはもう戻れないのだ。その分落ち着きを手に入れたから冷静に物事を見ることができるようになったけど。

「それはそれでいいけどさ〜」

大きめの独り言が出て慌てて口を塞ぐ。でもそんなことをしなくてももう良いことに気がついた。自分が住んでいるこの部屋には自分ひとりしかいない。眠っている親はもういないのだ。初めてのひとり暮らし、それにまだ慣れない。家に帰ったらあったかいご飯が置いてある、なんてこと元からなかったけど。でもお惣菜だらけの冷たいご飯が懐かしい。母さんの髪を乾かす音も朝聞こえる父さんがコーヒーを淹れる音も。家族三人仲が良かったわけじゃなかった。それでもあの色とりどりの生活音が恋しい。

コーヒーはいつの間にか食べやすいカップラーメンみたいな温度になっていた。目を擦ってもやもや感を頭の隅に追いやる。程よくさめた目もコーヒーもフル活用してレポートを終わらせてやろうではないか。あと二百字くらいだ。早く終わらせて大学に行こう。練習がしたい。

別の大学の同級生に教わった集中力爆増するツボを押してみた。相変わらず痛い!でもなんだか喝が入ったような気がしないでもない。
あと二十分で終わらせよう。そう心に決めてペンを手に取った。


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久々に書いた!何も決めていない
とりあえず少しずつ書きたい


2021.05.07.

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