たとえのはなし

．

殴られた時よりも強い頭痛で目が覚めた。今何時？時計なんて気の利いたものはこの部屋にないのでわからない。わからないが、カーテンの隙間から溢れ出ている日光が眩しかった。ということは朝か昼だ。...って、なに当たり前のことを考えとんじゃボケ！ガキでも分かるわ！頭の中で怒鳴ったら頭痛いのが更に増して嫌な気分になった。

とりあえず思いのほか寝過ぎてしまったようだ。全く、これだから年は取りたくないぜ。身体を起こし頭を抑える。外から聞こえるセミの鳴き声が頭に響いて痛い痛い。...今日は何日だ？まあそんなことはどうでもいい。どうせ毎日が日曜日のような生活なのだ。思い出したところで何か役に立つわけでもない。

うわ、まじで頭いてえ

あと昨日のことなんも覚えてねえ。なんでこんな頭が痛むのだろうか。酒を飲んだ記憶も喧嘩をしたらなる筋肉痛もない。じゃあ俺は酒を飲んでないし喧嘩もしていない、のか？知らん！けど記憶が無いってことは多分酒を飲んでしまったのかもしれない。いやでもこんなに頭痛くなるほど飲むか？金もねえのによ。けど自分から香水の匂いがする。じゃあ俺はそういう店で酒飲んできたんだわ。昨日...てアホか！自分のことくらいすぐわかれ！！

「頭いてえ...」

ベッドにまた沈みそうな身体をなんとか起きたままの体勢を保ち、まあ悪酔いしちまったのは仕方ねえ。とりあえず臭えしシャワー浴びてくるかと立ち上がろうとした。



は



信じて欲しい。今、本当に、今、気づいたのだ。頭痛が痛すぎて、いや日本語がおかしい。おかしいがンなこと頭で考えてじっくり喋ってる場合じゃねえんだ。とにかく頭痛が痛くて全く、外の音とカーテンの隙間の光くらいしか視覚聴覚に反応しなかったのだ。

自分は本来とても敏感な人間だ。昔付き合ってた（いや突き合ってた？）女がミリ単位で髪を切っていてもすぐわかった（口には出さなかったが）。良く行くダチの家の家具が微妙にずらされていたってわかった。居酒屋の酒の味が薄くなったのも......

そんなんだからいつもダチには「目敏い」「鋭い」「面倒臭え女みてえ」だのと褒められ（もちろんボコした）、居酒屋とは大喧嘩もしたこともある。

「お前、寝てる時隣に誰か入ったらすぐ起きそうだよな」

そんな風に言われたこともある。

ある

あった

あったんだ


結論から言おう。別に多分ベッドん中に入られたわけじゃあねえ。だって俺が外側にいるし。だからどっちかってと俺が招いたのだと思う。ンン、もうお分かりかな？まあ察しのいいジャップの諸君ならわかると思う。でも中にはちこーっと俺の説明がヘタクソでわからないカワイコちゃんなんかもいると思う。からちゃんと言うわ。

隣　を　見　た　ら　知　ら　ね　え　ヤ　ツ　が

め　っ　ち　ゃ　こ　っ　ち　見　
て　る




よくわからない汗が出てきて頭の痛さなんてわからなくなってきた。酒を飲んだ時より泥酔しているような気がするしいつも以上に頭が冴えているような気もする。でもとりあえず言えることはコイツのことは覚えてないし、だけどコイツはめっちゃこっちを見てくる。

俺だって人間だ。覚えてないことだってある。正直わり算の筆算の仕方だって忘れた。あとかけ算七の段言えない。そして今気まずいとか怖いとかっていう感情も忘れた。でも全く覚えてないのをちょっぴり申しわけないという気持ちがある。うん申しわけない。だけどテメエも黙ってねえでなんか言え。怖いから。あ、感情一つ取り戻した。いや取り戻した途端に恐怖の心が芽生えた。吐き気を催す邪悪というのはこういうことを言うんですかね先生？


だってコイツ男なんだもん。
それになかなか二枚目で、そんで俺と同じニオイがする。

俺だってそういうダチがいて、しょっちゅうケツを狙ってだの言われているが、決して俺はそっちの人種ではない。カワイイ娘と乳繰り合うのがこの世の何よりもの幸福だと思う人間だ。


その俺が、この二枚目を


やばいまずいやばいこれはまずいだってこの男どう見たってノンケだおそらく多分メイビー。この呆然と目を拡げて同じように口も拡げている男に刑事訴訟とか起こされたらどうしようとか俺こんな男に興奮とかするんだとか...というかコイツ一体いつから起きていた？起きてたなら起こせよアホかいや起こせねえか頭真っ白かよ畜生俺もだぜハハ仲間仲間・・・


しかし俺は肛門が痛い


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

■タイトルに戻る

タイトルに戻る話二つ目だけどだいじょぶそ？あとBL書くのも三回目だしこんな書き方するの初めてだし無理。無理が重なりすぎてて無理。

2019.09.01