例えばこんな既視感
コーヒーを飲む時豆が安いと必ず文句をつけるとか
爪はヤスリで削って形を整えるとか
食べる時必ず野菜から食べるとか
お風呂は最低一時間とか
他にもいろいろ











「ねえ、コーヒー美味しくないんだけど」

うるさいです

そんな返しももうせず「それなら美味しいコーヒー豆買ってきてください」と軽く流すようにした。うるさいですだなんて返すと「君には言われたくないね」って言われるから。ストレスがたまる会話は少ない方が良い。胃のためにも。

「嫌だよ。僕が来ない間に君たちに飲み尽くされちゃうじゃないか」
「そうですね」

会話はこれで終わる。ジャラジャラうるさい彼はなんとなく不服そうに見えるけど。弁護士をいじめるためにわざわざ遠いここまで足を運ばないでほしいものだ。

「ねえ、ヒマだよおデコくん」
「あー、もう少ししたらみぬきちゃん帰ってくるので。そしたらどこかに遊びに行ったらどうですか?」

また不服そうにでかいため息を吐いた。指をパチパチ鳴らし始める。うるさいなあもう、声には出さないけど。こういうところ、全然違うのだ。

「今遊びたいんだけど」
「近くに公園がありますよ」
「遊具ないじゃないか」
「ありますよ。使えないだけで」
「それはもう使えないのと一緒だよ」

時計を見る。四時を少し過ぎていた。あと数十分もすればかわいい声が聞こえてくるだろう。今日の夕飯は何にしてあげようか。この事務所は(自分で作らなきゃいけないけど)夕ご飯が食べられるのがいい。食費も浮く。まあその分給料が安いんだけど。でも色んな経験もできるし、ひょんなことから思わぬ臨時収入もあるから良い。まあその分危ないことも多いんだけど。

「あー、じゃあ買いものしてきてください。あとでお金は返すので」
「...まあ百歩譲ってそれはいいとしようか。僕も暇暇うるさかっただろうしね」
「はい」
「......君は?」
「え?みぬきちゃん待ってます」
「...」
「なんでそんなに不服そうなんですか。暇なんでしょう?それなら行ってきてくださいよ」
「.........そうじゃなくてさ」

冷蔵庫をガサゴソ漁っている私の隣に彼は立った。うわあお、下からのアングルも、睨みつけてくるこの威圧感も、本当に、本当に・・・

「おデコくん、いつになったら僕のキモチに答えてくれるんだよ」
「...」
「もう一年待った。いい加減答えをくれてもいいんじゃない?」

でもここらへん、違うなあ。あの人は私にこんな大変子どもらしいわがままを言わなかったし、それに...こんなに私を求めてくれることも、しなかった。

「おデコくん」

こんな情熱的な瞳で私を見ることもしなかった。あの人はいつも冷めた目で私を面倒くさそうに、だけど微笑を浮かべて表面上だけ優しく接してくれた。

顔は同じかもしれない。手の形だって足の大きさだって...私の、この人の見たことのないところの形だって、同じかも...しれない。

「ねえおデコくん、僕は君のこと...」

だけど、私が愛しているのは決してあなたではないのだ。どんなに優しく抱きしめてくれたって、歯がガタガタ浮いてしまうような言葉を囁いてくれたって、どんなにあの人に似ていたって...!私は決してあなたに傾かない。ちょうどこの冷蔵庫のように。まあ冷蔵庫が傾いてたまるかって感じだけど。でも私の心とあなたの付けているその鎖のネックレスとは違うのだ。


ごめんなさい、って、言えたらいいのに


けどそれはできない。最後にしたあの人との〝約束〟だから。


ねえ検事?どうしてあなたは私を好きで、私はあなたのお兄さんが好きなんでしょうね。何か仕組まれているとは思いませんか?



下から元気な声が聞こえてきた。あなたは離れる。私も少し乱れた衣服を直す。これで元通りだ。

緩やかにドアが開いた。彼はいつも通りのキザな言葉を並べ、私はいつも通り四文字の言葉を言った。何事もなかったかのように。


ねえ先生。あなたがこの奇妙な状況を見たら、どう思うでしょうか。馬鹿馬鹿しいと笑うでしょうか、意味のないことは止めなさいと怒るでしょうか。それとも。

かわいらしい彼女が早速私のヘアゴムを使ってマジックを始める。私は失くしたり切ったりしないでよと、いつも通りの変わりのない声でのんびり言った。可哀想な彼はやっぱりキザに、指を鳴らしていた。



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兄のことが好きな女の子に恋しちゃう話
キョ→オド♀→キリ
キリオド♀は肉体関係あるよ。けどその中に先生からの愛はないよ…
キョオド♀は何もないよ。あるのは熱烈な恋心だけだよ……

2019.12.06.

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