ずっと〝友だち〟って言葉が苦手でした。転校とかしたし、長く続かなくって。友だちをつくるのもヘタでした。
 今でも〝友だち〟っていう言葉は苦手だし、分からないです。けど、私に関わろうとしてくれる人が、みんな良い人なのは分かります。でも、「仲良くしてね」なんて恥ずかしいこと、言える私になれませんでした。

『オレはお前が好きだよ!』

 そんな私にも、真正面からこんな風に言ってくれる〝友だち〟ができました。その人は異性で、今までに関わってきたどんな人よりも真面目な人でした。口は悪いけど。
 私は彼が大好きになりました。これが〝友だち〟かって、思いました。名前で呼べないし、上手く喋ることもできない...けど!でも全然、前よりも意思疎通、できるようになりました。
 私は彼と話すことが楽しかったし、ボールを取ってもらえるのもすごく嬉しかった。
 とにかく私たちは良きバッテリーで、良き〝友だち〟。バッテリーは分からないけど、その関係はずっと続くんだって、そう思っていました。

 だからびっくりしたんです。すごく真剣な顔をしたあなたが、顔を真っ赤にしているのに。私があなたのことを大好きになったあの日のように、手を力強く握り締めるのに。

「レン」

 最近名前呼びになった声が上擦っているのに。彼の手は震えていて、とても温かかった。今日は何故かふたりきりで、何故かあなたは自転車をしっかり停めていた。いつもならすぐにバイバイなのに。

「ど、うしたの?」

 何も言わないあなたに、私は何があったのか分からず、無駄にあたふたしてしまう。こんな時に何か気の利いたことができれば良いのだけれど、私にそんな能力があるわけもなく。ただ真剣な瞳を見つめ返すことしかできませんでした。

「レン」
「う、ん?」
「オレはお前が、好きだ、よ」
「!私も、阿部くん、好きだ!」

 阿部くんは何も言わずに手を解いて、私の両肩を優しく掴んだ。え?と首を傾げて見上げると、阿部くんは私の顔をじっと見た。

「...あ、阿部、くん?」
「動くなよ」

 そう言った彼は、私の顔にゆっくり顔を近づけてきた。え?首を傾げたかったけど、動くなと言われているからできない。3センチ、2センチ、1センチ。私は思わず目を瞑った。どうしたら良いのか分からなかった。彼の額が私の額に当たる。そして鼻にも。

「あっ、阿部くん!!」
「...」
「どどど、どうしたの?!なんか、変?だっ!」
「...オレは、オレは......」

お前とキスしたい、ってイミでなんだけど

 すり、と一度、阿部くんは鼻を擦らせた。私の肩がすごい勢いで飛び上がる。

「あっ、あ、あ......!」
「...返事とか期待してねーけど、でも貰えたら、嬉しい」

 阿部くんは離れた。一歩、二歩、と私の足は勝手に後ろに進んでしまう。阿部くんは名残惜しそう(?)に私の髪に触れ、頬に触れた。

「今日のこと、普段のメールみたいに無かったことにすんなよ。てか!メールも返信寄越せ!!」
「な、なん.........」
「あ、返事はしなくても良いけど、オレがお前のこと、そういう風に見てるってこと。忘れんなよってことな。あんまり気ィ許してっと、ホントにオレ、お前のこと喰っちまうから」

 阿部くんは頭を掻くと、くるりと後ろを向いて自転車に跨った。混乱する頭が変に熱い。脳みそが煮えてしまいそうだ。

「ほんじゃ、な。ちゃんと飯食って寝ろよ」

 そう言うと阿部くんはすぐに去ってしまいました。いつもならバイバイと手を振るけど、今日は無理だった、できなかった、できるわけがなかった。

だって、だってあの瞳と鼻と、おでこと唇と!

「ああああ〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!!!」

 私はその場に蹲った。もうしばらく立ち上がれそうにない。とりあえず眠るまでは、彼のことが消えない。消えてくれないだろう。

『オレはお前が好きだよ』

「オレだって...好きだよ!」

 でも同じ好きじゃないんだ。それだけは分かった。
車の音が聞こえてくる。あ、母さんが帰ってきた。良かった、手を貸してもらおう。私が立ち上がれるように。

 でも阿部くん大丈夫かな。寒くないかな。今は全く別のことしか考えられない。今日は急に冷えた。阿部くんTシャツ一枚で平気だったかな。貸せば良かったかな。

 車のドアが閉められる音がした。母さんが帰ってきた。顔の火照りをまず冷まそう!手で思い切り顔を扇ぐ。果たしてこの行為に効果はあるのだろうか。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

アベ→→→→→→→→→ミハ♀が好き

2020.10.03.

about

・当サイトは、女性向け二次創作小説サイトです。
・原作者様、出版社様、関連会社様とは一切無関係です。
・BL(ボーイズラブ)要素を含みます。
・小説の中には、女体化が多く含まれております。
・転載、複製、加工、及び自作発言は絶対にお止めください。